バンコクに住んで半年あまりになる。タイ国内ではAISのプリペイドSIMをメインにしつつ、月1〜2回のクアラルンプールやホーチミンへの出張ではSailyのeSIMを追加して使っている。渡航前に設定を済ませ、着陸した瞬間から通信が使える——この安心感は一度知ると手放せない。
当サイトの既存のeSIM記事はノマド・長期滞在者向けに書いてきたが、1〜2週間のタイ旅行なら判断基準はもっとシンプルだ。この記事では、タイ旅行者がeSIMを選んで渡航前に設定を終えるまでの手順と、空港SIMとの使い分け、つまずきやすいポイントを正直に書く。
この記事の結論
- 対象者:1〜2週間のタイ旅行を予定していて、現地の通信手段を決めたい人
- 結論:旅行前にSailyまたはAiraloのタイ向けeSIMを設定しておけば、到着直後の通信でつまずきにくい
- 理由:空港のSIMショップに並ぶ必要がなく、購入から設定まで日本で完結するから
- 筆者の体験:バンコク在住でSailyを2026年1月〜6月の約6カ月使用。バンコク都市部の実測は下り45〜80Mbpsで、ビデオ会議も含めて実用に問題なかった
- 注意点:eSIM非対応端末・SIMロックあり端末では使えない。2週間を超える滞在なら現地SIMの方が安くなる
タイ旅行にeSIMをすすめる理由
eSIMとは、スマートフォンに内蔵された仮想SIMに通信プランを書き込んで使う仕組みだ。物理SIMカードの差し替えが不要で、アプリやQRコードから数分で追加できる。
タイ旅行の通信手段は大きく3つある。
| 手段 | 準備タイミング | 到着直後の通信 | 手間 |
|---|---|---|---|
| eSIM | 渡航前に完結 | 着陸後すぐ使える | 最小 |
| 空港・現地のSIM | 到着後に購入 | ショップの行列次第 | 中(混雑時は行列に並ぶ) |
| 日本キャリアの海外ローミング | 不要 | すぐ使える | 小(ただし料金は契約次第) |
空港のAIS SIMショップは、混雑する時間帯には30〜60分待つことがある。1週間の旅行でその1時間はもったいない。eSIMの最大の価値は「到着直後の1時間を取り戻せること」だと思っている。
到着してすぐ必要になるのは、GrabやBoltなどの配車アプリ、Google Maps、翻訳アプリ、そして家族への到着連絡だ。どれも通信がなければ始まらない。
補足: 日本キャリアの海外ローミングやパケット定額も選択肢にはなる。ただし料金体系は契約プランによって大きく異なるため、比較するなら出発前に自分の契約条件を確認してほしい。本記事ではeSIMを軸に解説する。
まず確認:あなたのスマホでeSIMは使えるか
旅行者が最初につまずくのがここだ。eSIMを購入する前に、次の2点を必ず確認してほしい。
1. 端末がeSIMに対応しているか
目安は次のとおり。
- iPhone:XS(2018年)以降のほぼすべてのモデル
- Android:Google Pixel 3以降、各社フラッグシップモデル中心
Androidの格安モデルや古い機種は非対応のケースがある。確実なのは、SailyやAiraloの公式サイトにある対応端末リストで自分の機種名を確認することだ。iPhoneなら「設定」→「一般」→「情報」にEID欄があればeSIM対応と判断できる。
2. SIMロックが解除されているか
キャリアで購入した端末は、SIMロックがかかっていると海外のeSIMを追加できない。日本では2021年10月以降に発売された端末は原則SIMロックなしで販売されているが、それ以前の端末や中古端末は要確認だ。iPhoneなら「設定」→「一般」→「情報」の「SIMロック」欄で「SIMロックなし」と表示されるかを見ればいい。ロックされている場合は、契約キャリアのマイページ等から解除手続きをしてから購入する。
この2つを確認せずにeSIMを買ってしまい、現地で使えなかった——という失敗が一番痛い。 購入前のこの5分を省略しないでほしい。
日数×データ量でプランを選ぶ
eSIMプランは「対象国×データ容量×有効日数」の組み合わせで選ぶ。旅行の使い方別のデータ消費目安は次のとおりだ。
| 使い方 | 1日あたりの目安 | 1週間 | 2週間 |
|---|---|---|---|
| 地図・LINE・調べもの中心 | 〜0.5GB | 3GB前後 | 5GB前後 |
| 上記+SNS投稿・写真共有多め | 0.5〜1GB | 5GB前後 | 10GB前後 |
| 動画視聴・テザリングあり | 1GB〜 | 10GB前後 | 10GB超・無制限系 |
ホテルやカフェのWi-Fiを併用すれば消費は抑えられるが、旅行中は移動中の利用が想像以上に多い。迷ったら1ランク上の容量にしておく方が、残量を気にしながら旅行するストレスがない。
なお、タイ1カ国だけでなくマレーシアやベトナムにも足を延ばす旅程なら、国別プランよりアジア広域プランが向く。周遊の場合の選び方は「タイ・マレーシア・ベトナムをまたぐeSIM比較」で詳しく書いている。
SailyとAiraloどちらを選ぶか
タイ向けeSIMは多数あるが、この2つを候補にすれば大きく外さない。自分はSailyをタイ・マレーシア・ベトナムで約6カ月使ってきた。
| 比較項目 | Saily | Airalo |
|---|---|---|
| 対応国数 | 150以上 | 200以上 |
| タイ国別プラン | あり | あり |
| アプリ | シンプル・日本語対応 | 機能多め・カスタマイズ性高 |
| 開発元 | Nord Security(NordVPN系) | 独立系(2019年創業) |
| データ残量通知 | 80%消費時に通知 | あり |
| 広告ブロック・Web保護 | 内蔵 | なし |
| 割引コード | なし | KAIKA15で新規15%オフ |
| データ追加(トップアップ) | アプリ内で可 | アプリ内で可 |
Sailyが向いている人:
- タイ1カ国のシンプルな旅行で、アプリの分かりやすさを重視する
- フリーWi-Fiも使う予定があり、広告ブロック・Web保護が内蔵されている点に価値を感じる
Airaloが向いている人:
- 今後タイ以外の国にも旅行する予定があり、対応国の広さを重視する
- 割引コード(KAIKA15で新規15%オフ)を使いたい
料金は、筆者が2026年6月に確認した時点でタイ7日間・5GB級のプランがSaily約$8、Airalo約$10という水準だったが、プラン構成・価格・機能は時期によって変動する。上の比較表も執筆時点の情報のため、購入前に必ず公式サイトで最新のプラン内容と価格を確認してほしい。
自分の実体験ベースの評価としては、Sailyでバンコク都市部の実測が下り45〜80Mbps・上り15〜30Mbps(Speedtestアプリ)で、ビデオ会議を含む仕事にも使えた。旅行の地図・SNS・動画用途なら、体感で困る場面は少ないはずだ。ただし通信速度は場所・時間帯・端末で変わるため、同じ数値を保証するものではない。詳細は「東南アジアノマドのeSIM選び|Sailyを半年使った正直レビュー」に書いている。
渡航前のeSIM設定手順(5ステップ)
Sailyを例に流れを説明する。Airaloもほぼ同じだ。日本を出発する前、自宅のWi-Fi環境で済ませておくのが鉄則になる。
- アプリをダウンロードしてアカウントを作成する(iOS / Android)
- タイのプラン(または旅程に合う広域プラン)を選んで購入する
- 画面の案内に従ってeSIMを端末に追加する。iPhoneなら「設定」→「モバイル通信」→「eSIMを追加」。QRコードまたはアプリ内の自動インストールで進められる
- 追加したeSIMをデータ通信用に指定し、日本の回線はデータローミングをオフにしておく。タイ用eSIM側はローミングオンが必要なプランが多いので、アプリの指示に従う
- タイ到着後、機内モードを解除してeSIM回線がつながるのを確認する。つながらないときは端末を再起動し、eSIMの回線選択とローミング設定を見直す
慣れれば購入から設定まで10分程度で終わる。初めてでも、自宅で落ち着いてやれば難しい作業ではない。
補足: プランの有効期限は購入日ではなく、初回のデータ通信を開始したタイミングから起算されるのが一般的だ。出発の数日前に買って設定まで済ませておいても、日数を無駄にしにくい。起算条件の詳細は購入前に各サービスの説明で確認してほしい。
注意:設定済みのeSIMを端末から削除しないこと。 一度削除すると再インストールできないケースがあり、旅行者のトラブルとして典型的だ。使い終わるまでは絶対に消さない。
空港SIM・現地SIMとの使い分け
eSIMが常に正解というわけではない。滞在日数で線引きするのが合理的だ。
| 旅程 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 3日〜1週間 | eSIM | 手間最小。価格差も小さい |
| 1〜2週間 | eSIMまたは現地SIM | 容量重視なら現地SIMが逆転し始める |
| 2週間超〜1カ月以上 | 現地SIM(AIS等) | プリペイドが圧倒的に安い |
タイの現地SIMは、AISのプリペイドなら月200〜300バーツ(約800〜1,200円)で無制限級のプランがあり、2週間を超える滞在ならコスト面で現地SIMが有利になる。ただし購入時にパスポートの提示が必要で、空港ショップは前述のとおり混雑することがある。市内の7-ElevenやAISショップでも購入できるので、長めの滞在なら「到着直後はeSIM→落ち着いてから現地SIM」という二段構えも現実的だ。
AIS・Trueなど現地SIMとeSIMの詳しい比較は「AIS・True現地SIMとeSIMの比較」を、1カ月以上の長期滞在・移住なら固定回線まで含めて「タイ長期滞在の通信環境まとめ」を参照してほしい。
旅行者がつまずくポイント(正直に書く注意点)
eSIMをすすめる記事は多いが、つまずきどころを先に知っておく方が役に立つはずだ。
- eSIM非対応・SIMロックあり端末では使えない。購入前の確認を飛ばさない(本記事の確認手順参照)
- 設定はWi-Fi環境が必要。現地到着後でも購入・設定はできるが、空港でWi-Fiにつなげず詰む可能性があるので、渡航前に済ませるのが安全だ
- eSIMは基本的にデータ専用。タイの電話番号は付かないプランが大半で、音声通話・SMSは使えない。LINE通話やアプリ内通話で代替する前提で考える
- 日本の番号はデュアルSIMで維持できる。日本側の物理SIM(またはeSIM)を残しておけば番号は生きるが、SMS受信の可否や料金は契約による。日本側のデータローミングはオフにしておく
- 日本向けの動画配信はeSIMを替えても見られるようになるわけではない。タイからのアクセスは海外扱いのため、TVerやNetflixの日本向け配信は視聴できないことがある。タイから日本のコンテンツを見たい人は「タイからTVerを見る方法」「タイから日本のNetflixを見る方法」で仕組みと注意点を書いている
- 銀行や決済アプリの認証は出発前に確認する。海外からのアクセスで追加認証を求められるサービスがある。ネット銀行や証券口座を旅行中に操作する予定があるなら、各サービスの海外利用条件を事前に確認しておく
どれも知っていれば避けられるものばかりだ。逆に言えば、端末確認と渡航前設定さえ済ませておけば、タイ旅行の通信で困る場面はかなり減らせるはずだ。
まとめ
1〜2週間のタイ旅行の通信は、次の手順で迷わず決められる。
- 出発前に端末のeSIM対応とSIMロック解除を確認する(ここを飛ばさない)
- 日数×使い方でデータ量を見積もる。目安は1週間で3〜5GB、2週間で5〜10GB
- シンプルさ重視ならSaily、対応国の広さと割引重視ならAiralo。価格とプラン構成は変動するため公式サイトで最新を確認する
- 自宅のWi-Fiで購入・設定まで済ませてから出発する。有効期限は初回通信からの起算が一般的なので数日前の購入で問題ない
- 2週間を超える滞在なら現地SIMへの切り替えを検討する
東南アジア全体でのeSIM選びの全体像は「東南アジアeSIM完全ガイド」にまとめている。タイ以外も回る旅程の人はそちらも参考にしてほしい。
よくある質問
Q. タイ旅行ではeSIMと空港のSIMカウンターどちらがいいですか?
A. 1〜2週間の旅行ならeSIMを渡航前に設定しておく方が楽です。空港のSIMショップは混雑時に30〜60分待つことがあり、到着直後の疲れた状態で並ぶ負担は小さくありません。eSIMなら着陸後すぐ地図や配車アプリを使えます。
Q. eSIMはいつ購入すればいいですか?
A. 出発の数日前で十分です。多くのeSIMプランの有効期限は購入時ではなく初回のデータ通信を開始したタイミングから起算されるため、早く買っても損はしにくい仕組みです。念のため購入前に各サービスの規約で起算条件を確認してください。
Q. 自分のスマホでeSIMが使えるか確認する方法はありますか?
A. 目安はiPhone XS(2018年)以降、Google Pixel 3以降です。加えてキャリアで購入した端末はSIMロックが解除されている必要があります。確実なのは、SailyやAiraloの公式サイトにある対応端末リストで自分の機種を確認することです。
Q. タイ旅行中も日本の電話番号でSMS認証を受けられますか?
A. デュアルSIM対応端末なら、日本の物理SIM(またはeSIM)を残したままタイ用eSIMをデータ通信用に追加できます。日本側の回線でSMSを受信できるかや料金は契約内容によるため、出発前にご自身のキャリアの海外ローミング条件を確認してください。データローミングは日本側の回線ではオフにしておくと高額請求を避けやすくなります。
Q. タイからTVerやNetflixの日本作品は見られますか?
A. eSIMを入れてもタイからのアクセスは海外からのアクセスとして扱われるため、日本向け配信サービスは視聴できないことがあります。視聴の可否は各サービスの仕様や規約によります。詳しくはタイからの視聴方法を扱った別記事で解説しています。
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